FIREを目指そうと思ったとき、最初に気になるのが「いくらあれば仕事を減らせるのか」「あと何年かかるのか」ではないでしょうか。
よく使われる「年間支出の25倍」は、取り崩し率を4%と置いた場合の計算例です。しかし、FIRE後も仕事を続けるか、税金・社会保険をいくら見込むか、教育費や住宅修繕費を別に確保するかで、必要な金額は大きく変わります。
FIREの目標金額は、他の人の固定額を借りるのではなく、自分の年間支出とFIRE後の手取り収入から計算することが大切です。
この記事では、目標運用資産を計算し、現在の資産と年間積立額から達成年数を複数の条件で試算するところまで、順番に解説します。
この記事でわかること
- FIRE後の年間支出の出し方
- FIRE後の手取り収入を目標金額へ反映する方法
- 取り崩し率3%・3.5%・4%で必要資産を比較する方法
- 現在の資産と年間積立額から達成年数を試算する方法
- 税金、社会保険、年金、教育費、住宅修繕を計算へ入れる考え方
この記事はこんな人におすすめ
- FIREに必要な金額がわからない人
- 「年間支出×25」をそのまま使ってよいか迷っている人
- 完全FIREだけでなく、サイドFIREも含めて現実的な期限を考えたい人
- 家族の教育費や住宅費も計画へ反映したい人
結論|FIREの目標金額は5つの数字で決まる
FIREの目標金額と達成年数を考えるときは、まず次の5つの数字を用意します。
- FIRE後の年間支出
- FIRE後の年間手取り収入
- 想定する取り崩し率
- 現在の運用対象資産
- FIREまでの年間積立額
目標運用資産の基本式は、次のとおりです。
目標運用資産 =(FIRE後の年間支出 − FIRE後の年間手取り収入)÷ 想定取り崩し率
教育費、数年以内の住宅修繕費、生活防衛資金などは、目標運用資産へ一律に混ぜず、別枠で考えます。
総目標額 = 目標運用資産 + 別枠で確保する資金

そのうえで、現在の運用対象資産、年間積立額、想定リターンを使って、目標へ届くまでの年数を試算します。
目標金額を計算する前にFIREの種類を決める
必要資産を計算する前に、FIRE後も仕事を続けるか、どのくらいの生活水準を維持したいかを仮決めします。
完全FIREなら生活費の大部分を資産から賄います。サイドFIREなら、仕事や事業の収入を残す分、資産から賄う年間不足額を小さくできます。
まだ目指すスタイルが決まっていない場合は、先に「FIREの種類をわかりやすく比較|自分に合うスタイルの選び方」をご覧ください。
コーストFIREは、現在の生活費を資産から取り崩す状態ではありません。将来の退職資金への追加投資を減らせるか考える段階なので、本記事の「現在の生活費を賄うための目標資産」とは分けて計算します。
ステップ1|FIRE後の年間支出を計算する
現在の家計簿を出発点にしつつ、退職後に減る支出と増える支出を反映します。月々の生活費だけでなく、年払い、不定期支出、税金、社会保険も年額に直します。
日常生活費を12か月分にする
- 住居費
- 食費
- 水道光熱費
- 通信費
- 交通費
- 日用品費
- 医療費
- 趣味・娯楽費
直近1か月だけでは季節差が出るため、可能であれば直近1年の実績を使います。家計簿がない場合は、銀行口座やクレジットカードの履歴から大きな項目だけでも集計します。
年払い・不定期支出を年額へ直す
- 固定資産税
- 保険料
- 車検・自動車税
- 家電の買い替え
- 旅行・帰省費
- 住宅修繕
毎年発生しない支出は、過去数年の平均や買い替え周期から年額へ直します。たとえば、10年に一度100万円程度の支出を見込むなら、単純化した年平均は10万円です。
ただし、3年後に住宅修繕を行うなど、使う時期が近い資金は年平均にするだけでなく、現金などで別枠に確保する方が管理しやすくなります。
税金と社会保険を忘れない
会社員の給与明細では、税金や社会保険料が先に差し引かれています。退職後は自分で支払うものが増えるため、現在の「手取り生活費」だけを使うと不足しやすくなります。
2026年度の国民年金保険料は月額17,920円です。会社員を退職して国民年金第1号被保険者になる場合などは、年間支出へ反映します。加入区分や免除等で実際の負担は変わるため、日本年金機構の最新情報で確認してください。
国民健康保険料は全国一律ではありません。厚生労働省の案内では、具体的な算定方法は各市町村の条例等で定められ、世帯や被保険者、所得等をもとに計算すると説明されています。居住自治体の試算ページや窓口で確認しましょう。
投資資産の取り崩しにかかる税金も、口座によって異なります。課税口座では上場株式等の譲渡益や配当等に原則20.315%の税率が使われる場合がありますが、売却額の全額に税金がかかるわけではありません。取得額を上回る利益部分などが課税対象になります。
一方、NISA口座の運用益は非課税です。「年間取り崩し額×20.315%」のように一律計算せず、NISA、課税口座、現金の内訳から税引後に使える金額を考えます。
現在の生活費をそのまま使わない
| 減る可能性がある支出 | 増える可能性がある支出 |
|---|---|
| 通勤費、仕事用の衣服、外食費 | 旅行、趣味、在宅時間の光熱費 |
| 住宅ローン完済後の返済額 | 住宅修繕、医療・介護費 |
| 子どもの独立後の生活費 | 教育費、家族支援 |
「今月ぎりぎりまで削った生活費」ではなく、FIRE後も無理なく続けられる支出を基準にします。FIREは長期計画なので、我慢を前提にした金額は途中で崩れやすくなります。
ステップ2|FIRE後の年間手取り収入を差し引く
FIRE後も収入がある場合は、年間支出から差し引きます。サイドFIREの必要資産が完全FIREより少なくなりやすいのは、この年間不足額が小さくなるためです。
対象にする収入
- 短時間勤務などの給与収入
- 副業・事業収入
- 公的年金・企業年金
- 家賃などの継続収入
額面ではなく手取りで考える
給与は税金・社会保険料を差し引いた手取り、事業収入は必要経費と税金・社会保険を考慮した後の金額を使います。
また、好調な年の副業収入や、現在の長時間労働を続ける前提は避けます。FIRE後も無理なく続けられる働き方で、やや控えめな金額を置く方が計画を見直しやすくなります。
年金受給前後で期間を分ける
40代や50代でFIREする場合、FIRE直後から公的年金を受け取れるわけではありません。年金を全期間の収入として一律に差し引くと、受給開始前の資金が不足します。
- FIREから年金受給開始まで
- 年金受給開始後
この2期間に分け、受給開始前を支える資産と、受給開始後の年間不足額を確認します。将来の年金額は、ねんきんネットの年金見込額試算で、今後の働き方や受給開始時期を変えて確認できます。
ステップ3|取り崩し率ごとの目標運用資産を計算する
年間支出から年間手取り収入を差し引くと、資産から賄う「年間不足額」がわかります。
年間不足額 = FIRE後の年間支出 − FIRE後の年間手取り収入
年間不足額を想定取り崩し率で割ると、目標運用資産の目安を計算できます。
| 想定取り崩し率 | 計算方法 | 年間不足額240万円の例 |
|---|---|---|
| 4% | 年間不足額÷0.04 | 6,000万円 |
| 3.5% | 年間不足額÷0.035 | 約6,860万円 |
| 3% | 年間不足額÷0.03 | 8,000万円 |
取り崩し率を低く置くほど目標資産は増えます。大切なのは、どれか一つを正解と決めることではなく、複数の数字を見て、自分のFIRE期間や支出調整の余地に合う幅を持つことです。
「年間支出×25」の意味
年間支出の25倍は、年間不足額を4%で割った結果です。年間不足額が240万円なら、240万円÷4%=6,000万円となります。
いわゆる4%ルールの基礎になったCooley・Hubbard・Walzの研究では、米国の株式・債券の過去データを使い、資産配分、取り崩し率、15年から30年の期間などを比較しています。研究上の「成功」は、期間中に資産が枯渇しないことです。元本を減らさず暮らせるという意味ではありません。
また、過去の米国市場で一定の結果が出たことは、将来の日本のFIRE生活を保証しません。30年を超える取り崩し期間、税金、手数料、資産配分、物価上昇、相場下落時の支出調整などで結果は変わります。
4%ルールの研究前提と、FIRE後に実際にどう取り崩すかは、6本目「FIRE後の出口戦略と4%ルール」で詳しく扱う予定です。本記事では、目標金額を比較するための出発点として使います。
別枠で確保する資金
- 生活防衛資金
- 数年以内に使う教育費
- 住宅修繕費
- 車の買い替え費用
- 引っ越しなど予定している大型支出
使う時期が近い資金まで値動きの大きい資産で運用すると、必要なときに相場が下落している可能性があります。目標運用資産とは別に、使う時期と目的に合う置き場所を考えます。
安全余裕は、取り崩し率を低めにする、現金等を別枠で持つ、支出を調整できるようにするなど、複数の持たせ方があります。同じリスクへの備えを何度も足して過大な目標にしないよう、何のための余裕かを記録しておきましょう。
目標資産に含めるもの・含めないもの
| 資産 | 考え方 |
|---|---|
| NISA・課税口座の株式や投資信託 | 運用対象資産へ含める。税負担は口座ごとに考える |
| 現金・債券 | 運用資産、生活防衛資金、近い将来の支出に分ける |
| iDeCo | 長期資産へ含められるが、受給可能年齢前の生活費とは分ける |
| 自宅 | 売却・賃貸等で現金化する計画がなければ、生活費を生む運用資産へ含めない |
| 教育費・修繕費 | 使途が決まっている部分は運用対象資産から分ける |
iDeCoは原則として受給可能年齢まで自由に引き出せません。60歳から受け取るには通算加入者等期間が10年以上必要で、期間が短い場合は受給可能年齢が繰り下がります。詳しい条件はiDeCo公式サイトで確認できます。
ステップ4|FIREまでの達成年数を計算する
目標運用資産を決めたら、現在資産と年間積立額から何年かかるかを試算します。
計算に必要な4項目
- 目標運用資産
- 現在の運用対象資産
- FIREまでの年間積立額
- 想定実質リターン
GoogleスプレッドシートやExcelでは、次のようにNPER関数で概算できます。
=NPER(想定実質リターン,-年間積立額,-現在の運用対象資産,目標運用資産,0)
最後の0は、積立を各年末に行う前提です。現在資産と年間積立額をマイナス、目標資産をプラスで入力します。
この計算は、毎年同じリターンで増える単純なモデルです。実際の市場は上昇と下落を繰り返すため、表示された年数は予定日ではなく、前提を比較するための目安として使います。
0%・2%・4%など複数シナリオで確認する
一つの利回りだけで達成年を決めると、その前提が外れたときに計画全体が崩れます。運用益を見込まないケース、低めのケース、中間のケースなどを並べます。
特に、達成年数を短く見せるために高い利回りを置くのは避けましょう。リターンを上げようとして値動きの大きい資産へ偏ると、達成年数の不確実性も高くなります。
物価上昇とリターンの前提をそろえる
現在の生活費を使って「現在の購買力で6,000万円」と目標を置くなら、達成年数の計算には、運用リターンから物価上昇率を差し引いた実質リターンを使うと整理しやすくなります。
たとえば名目リターン4%、物価上昇率2%と置くなら、単純化した実質リターンはおおむね2%です。厳密には「(1+名目リターン)÷(1+物価上昇率)-1」で計算します。
一方、将来の物価上昇を含む金額まで目標資産を毎年増やすなら、名目リターンで計算します。名目の目標額と実質リターンを混ぜないことが重要です。
貯蓄率だけでは達成年数は決まらない
貯蓄率は家計の余力を見る便利な指標ですが、同じ貯蓄率でも、現在資産、年収、年間支出、運用結果が違えば達成年数も変わります。
達成年数を計算するときは、貯蓄率だけでなく、実際の年間積立額と現在の運用対象資産を使いましょう。
計算例|年間支出360万円・FIRE後収入120万円の場合
具体例で、目標金額と達成年数を計算します。
| FIRE後の年間支出 | 360万円 |
|---|---|
| FIRE後の年間手取り収入 | 120万円 |
| 年間不足額 | 240万円 |
完全FIREで年間手取り収入が0円なら、年間不足額は360万円です。サイドFIREで月10万円、年120万円の手取り収入が続けば、年間不足額は240万円まで下がります。
| 想定取り崩し率 | 完全FIRE 不足額360万円 | サイドFIRE 不足額240万円 |
|---|---|---|
| 4% | 9,000万円 | 6,000万円 |
| 3.5% | 約1億290万円 | 約6,860万円 |
| 3% | 1億2,000万円 | 8,000万円 |
同じ年間支出でも、FIRE後の手取り収入120万円によって、3.5%で計算した目標運用資産は約3,430万円下がります。仕事を完全にゼロにするか、小さく続けるかで必要資産が大きく変わることがわかります。
次に、サイドFIREの目標運用資産を約6,860万円とし、現在の運用対象資産3,000万円、年間積立額300万円で達成年数を比較します。
| 想定実質リターン | 目標到達までの概算 | 到達時の概算資産 |
|---|---|---|
| 0% | 13年 | 6,900万円 |
| 2% | 10年 | 約6,942万円 |
| 4% | 8年 | 約6,870万円 |

これは、各年末に300万円を積み立て、実質リターンが毎年一定と仮定した概算です。税金、手数料、積立時期の違い、実際の相場変動は反映していません。
さらに、数年以内の教育費や住宅修繕費として500万円を別枠で確保するなら、運用資産約6,860万円とは別に準備します。現在資産3,000万円の中にその500万円が含まれている場合は、現在の運用対象資産からも差し引きます。
わたしは、目標金額を一つの絶対値にするより、「この条件なら8年、慎重に見ると13年」という幅で持つ方が、相場に振り回されず計画を続けやすいと考えています。
計算結果が遠すぎるときに見直す4項目
目標年数が想像より遠くても、すぐに高い運用利回りを狙う必要はありません。まず、計画の前提を見直します。
- FIRE後の支出
満足度を大きく下げずに減らせる固定費や生活水準がないか確認する - FIRE後も続ける収入
好きな仕事や短時間勤務を残し、資産から賄う不足額を小さくできないか考える - FIREまでの年間積立額
本業収入、副業、固定費削減などで無理なく増やせないか確認する - 完全FIRE・サイドFIREなどの目標
仕事をゼロにすることではなく、嫌な仕事や長時間労働を減らす状態を中間目標にできないか考える
支出の見直し方は、次の3本目「FIREを目指すための支出最適化」で詳しく扱う予定です。
FIREの目標計算でよくある失敗
- 税金・社会保険を入れていない:給与から天引きされていた支出を退職後の家計へ戻す
- 毎年4%の利益が出る前提にする:4%ルールは一定の運用益を保証する考え方ではない
- FIRE後の収入を額面で差し引く:税金・社会保険・必要経費を考慮した手取りを使う
- 自宅や教育資金まで運用資産に含める:生活に必要な資産や使途が決まった資金を分ける
- iDeCoをすぐ使える資産として数える:受給可能になるまでの生活費を別に準備する
- 高い運用リターンを一つだけ使う:0%・2%・4%など複数の前提を比較する
- 物価上昇を無視する:現在価値と将来価値、名目リターンと実質リターンをそろえる
- 一度計算して終わりにする:収入、支出、家族構成、制度の変化に合わせて更新する
FIREの目標金額に関するよくある質問
FIREには5,000万円あれば足りますか?
年間不足額が200万円で、取り崩し率を4%と置くなら、計算上の目標運用資産は5,000万円です。ただし、税金・社会保険、大型支出、取り崩し期間、資産配分などで必要額は変わります。5,000万円を全員に共通する基準にはできません。
取り崩し率は何%で計算すべきですか?
一律の正解はありません。FIRE開始年齢、想定期間、資産配分、支出を調整できる幅、年金や仕事の収入などで変わります。まず3%・3.5%・4%を並べ、目標資産の幅を確認する方法が使いやすいでしょう。
将来の年金は目標金額から差し引いてよいですか?
受給開始後の収入として反映できます。ただし、FIREから受給開始までの期間には使えません。受給前と受給後に分け、ねんきんネット等で確認した見込額を使います。
持ち家はFIRE資産に含めますか?
自宅を売却、賃貸、リバースモーゲージ等で現金化する具体的な計画がなければ、生活費を生む運用資産には含めません。一方、住宅ローン、固定資産税、修繕費は年間支出や別枠資金へ反映します。
iDeCoは現在のFIRE資産に含められますか?
老後を含む長期のFIRE資産には含められます。ただし、受給可能年齢前は原則として引き出せないため、早期FIREから受給開始までの生活費を賄う資産とは分けて管理します。
教育費や住宅修繕費はどのように計算しますか?
使う時期と概算額を決め、目標運用資産とは別枠で確保します。時期が遠く不確実な支出は年平均を年間支出へ含める方法もありますが、数年以内に使う資金は値動きの大きい資産と分ける方が管理しやすくなります。
まとめ|目標金額は一つの点ではなく幅で持つ
FIREの目標運用資産は、FIRE後の年間支出から年間手取り収入を差し引き、想定取り崩し率で割って計算します。教育費、住宅修繕費、生活防衛資金などは、必要に応じて別枠で加えます。
「年間支出×25」は4%で逆算した目安であり、唯一の正解ではありません。3%・3.5%・4%の目標資産と、0%・2%・4%などの達成年数を並べ、自分の計画がどの範囲にあるか確認しましょう。
正確な未来を当てることより、支出、収入、取り崩し率、積立額、実質リターンという前提を記録し、変化に合わせて更新できることが大切です。
目標まで遠いと感じたら、高い利回りを狙う前に、支出、FIRE後の働き方、年間積立額、目指すFIREの種類を見直します。次のステップは、満足度を下げずに年間支出を整えることです。
投資には価格変動や元本割れのリスクがあり、将来の運用成果は保証されません。本記事の計算例は一般的な考え方を説明するための概算です。実際の税金、社会保険、年金、資産運用は、ご自身の状況と最新の制度を確認したうえで判断してください。
更新履歴
- 2026年8月2日:初版公開
